メンズ脱毛をどこで受けようかと思い、色々なメンズ脱毛のサイトを見ていると、脱毛クリニックが「永久脱毛」を謳っていることに気づく。で、ぼくは思った。「永久脱毛って何?」、「抜けた毛が永久に生えてこないのは脱毛クリニックだけで、脱毛サロンで脱毛しても再び生えて来るってこと?」と。
で、「永久脱毛」の意味について調べ、あまりのカオスに絶望した。というわけで今回は、「永久脱毛」がどういう意味なのか解説する。
メンズ脱毛ができる店舗は2種類
日本においてメンズ脱毛のサービスを受けられる場所は、大きく2種類。
- 脱毛クリニック
- 脱毛サロン
脱毛クリニックは医療機関で、脱毛サロンは美容サービス機関。それぞれの簡単な特徴は以下。
脱毛クリニックの特徴
- 永久脱毛ができる
- 医療機器が使える
- 麻酔が使える(痛みを麻酔で抑えられる)
- 副作用時に迅速な対応ができる
脱毛サロンの特徴
- 料金が安い
- 店舗が多い
- 痛みが少ない
- 美肌効果も期待できる
「永久脱毛」を謳う脱毛クリニック
で、たいていの脱毛クリニックの公式サイトでは、脱毛クリニックの医療脱毛と脱毛サロンの光脱毛を比べ、「脱毛サロンの光脱毛でできるのは減耗・除毛。永久脱毛ができるのは脱毛クリニックだけ」的なことが書かれている。
一見すると、脱毛クリニックで脱毛すると、永久に毛が生えてこなくなるんだと読める。
「永久脱毛=永遠に生えてこない」ではない
が、一方で「永久脱毛した後も生えてくることはあります」という注意書きもある。
つまり、「脱毛クリニックでは永久脱毛ができます。でも永久脱毛した場所から再び毛が生えることはあります」ということ。ますます「永久脱毛」という言葉の意味がわからない。
なら手っ取り早く、日本における「永久脱毛」の定義を確認する。
日本に「永久脱毛」の定義はない
結論から言うと、日本に「永久脱毛」の定義はない。
「永久脱毛」は「マジ卍」と同じ。ふわっと何が言いたいかはわかるけど、具体的な定義がない言葉。マジ卍。
脱毛クリニックの使う永久脱毛はどこから来た?
なら、脱毛クリニックは、日本に存在しない「永久脱毛」という言葉をどこから持ってきたのかというと、アメリカから持ってきている。輸入品だ。
正確に言うと、アメリカ版厚生労働省とも言うべきFDA(アメリカ食品医薬品局)から持ってきている。
FDAは、食品や薬や医療機器など安全性と効果を確かめ、承認する組織。脱毛の安全性や効果についてもまとめており、その中で「permanent hair removal」という言葉を使っている。
つまり、日本の「永久脱毛」とは何かを詳しく知るためには、輸入元であるFDAの脱毛の定義について調べる必要がある。
アメリカの脱毛の定義
FDAでは、脱毛の方法ごとに、安全性と効果をまとめている。具体的には、以下の5種類。
- Laser Hair Removal(レーザー脱毛)
- Epilators: Needle, Electrolysis, and Tweezers(ニードル脱毛)
- Depilatories(除毛クリーム)
- Waxing, Sugaring, and Threading(ワックス脱毛)
- Shaving(シェービング)
で、現在、日本の脱毛クリニックの主流は、「ニードル脱毛」と「レーザー脱毛」。なので、この2つについて、FDAの公開している情報を見ていく。
ニードル脱毛は永久脱毛(Permanent Hair Removal)
FDAは、医療用電気分解装置による脱毛(ニードル脱毛)について、以下のように記載している。
Electrolysis is considered a permanent hair removal method, since it destroys the hair follicle.
(和訳) 電気分解は、毛包を破壊するため、永久脱毛の方法と考えられています。
FDA Removing Hair Safely より引用
「ニードル脱毛」は、輸入元のアメリカにおいて永久脱毛として扱われ、一度脱毛すれば二度と生えてこない脱毛方法だと分かる。
レーザー脱毛は永久脱毛(Permanent Hair Removal)ではない
次に、FDAは、レーザー脱毛について、以下のように記載している。
In this method, a laser destroys hair follicles with heat.
(和訳)この方法は、レーザーが熱で毛根を破壊するものです。
FDA Removing Hair Safely より引用
一見、ニードル脱毛同様に永久脱毛を保証してそうではあるが、「permanent hair removal」という言葉はどこにも出てこない。FDAは、「レーザー脱毛」を「永久脱毛」とは言ってない。あれあれ?
レーザー脱毛は永久減耗(Permanent Hair Reduction)
また、アメリカ最大の脱毛協会であるAEA(米国電気脱毛協会)では、ニードル脱毛とレーザー脱毛を比較して、レーザー脱毛はremoval(脱毛)でなくreduction(減耗)と定義している。
そう、減耗。レーザー脱毛は「永久減耗」なのだ。
Electrolysis:The only method recognized by the FDA as permanent hair removal.
Laser Hair Reduction:Provides hair reduction, not permanent hair removal. See the FDA’s Laser Facts.
(和訳)電気脱毛:FDAが永久脱毛と認めた唯一の方法です。
(和訳)レーザー脱毛:永久脱毛ではなく、減毛を目的とした方法です。FDAのLaser Factsを参照してください。
AEA How does electrolysis compare to other hair removal methods? より引用
AEAは永久減耗の根拠として、FDAのLaser Factsのリンクを貼っていたが、リンク切れしていて見れなかった。見つかったら追記する。
日本の「永久脱毛」=アメリカの「永久脱毛」+「永久減耗」
ここまでを整理すると、アメリカではニードル脱毛を「永久脱毛(Permanent Hair Removal)」、レーザー脱毛を「永久減耗(Permanent Hair Reduction)」と分けている。
しかし日本では、アメリカの言葉を輸入する際、ニードル脱毛とレーザー脱毛をまとめて「永久脱毛」にした。
つまり、日本の「永久脱毛」は、アメリカの「永久脱毛」と「永久減耗」の両者を指す言葉。ああ、ややこしい。「シャンプー」という言葉が「シャンプー」と「リンスー」の両者を指してるようなもの。ああ、ややこしい。
……最後の例えは、ちょっとよくわからなかったね。
日本の「永久脱毛」の実質的な意味
で、現在の日本の脱毛クリニックにおける脱毛方法は、レーザー脱毛が主流。
繰り返すけど、レーザー脱毛はFDAの定義する「永久脱毛」でなく「永久減耗」に相当。
つまり、日本の大部分の脱毛クリニックが謳う「永久脱毛」とは、FDAの定義する「永久減耗」のこと。で、FDAの定義する「永久減耗」は以下。
本当はFDAの公式サイトから探したかったけど、ゴリラクリニックがFDAの「永久減耗」の定義を日本語でわかりやすくまとめてくれていたから引用する。
つまり、「施術を終えてから4~12か月は、毛が生えにくい状態が維持されること」。これが、日本の脱毛クリニックが謳う「永久脱毛」の正体。
実績ベースで言えば永久も可能らしい
最終的に、ネガティブな結論に落ち着いてしまった感はあるので、「なんだ、4~12か月しか毛が無い状態が続かないのなら、メンズ脱毛はしなくていいか」と思った人にフォローを入れておく。
先程までの話は、あくまで「永久脱毛」と名乗っていい基準。つまりは、最低限保証される効果と言ってもいい。
日本でレーザー脱毛が始まってから20年以上。脱毛に携わった医師たちが施術後の経過を観察し、年単位の時間が経過しても生えてこない、という事例は続々と出てきている。つまり、実績ベースで言えば、文字通り「永久」に毛が生えてこない可能性も高いと言われている。
ぼくは日本の「永久脱毛」を信じる
色々書いたけど、レーザー脱毛の毛根を破壊する仕組みを考えれば、理論上は脱毛を終えた毛穴から永久に毛は生えてこない気はしている。
また、脱毛クリニックは法律で誇大広告が禁止されているので、現状規制されていないということは、永久脱毛という言葉があながち間違いではないと国も判断しているということだろう。多分。
なのでぼくは、日本の「永久脱毛」も信じる。処理の手間がない未来を目指して、脱毛クリニックに通い続ける。