子どもの頃は、日焼けになんて恐れるに足らないし、なんなら一日中外で遊んで真っ黒になった自分が誇らしくさえあった。日焼けは少年の勲章。が、年を取ってシミやシワという明確なリターンが返って来て、皆、慌てて日焼け止めを塗る決意を固める。
そして、初めて日焼け止めコーナーに訪れた男性たちは、大量に並ぶ日焼け止めの前に目を回して気絶鶴。SPFだとかPAだとか謎のアルファベットを見て、「ヒエラティック!!」と叫びながら家に帰ることになる。
というわけで今回は、日焼け止めの選び方を解説する。日焼け止めが欲しいけど買ったことがない人に是非読んで欲しい。
男性は日焼け止めを塗らない
ぼくの周りには、普段日焼け止めを塗らない男友達が多い。登山や街歩きといった長時間外へ出る用事があるときには塗っている人もいるが、普段は塗らない。飲みに行く時とか99%塗っていない。
2019年5月に株式会社カネボウ化粧品が公開した「紫外線に関する意識調査 2019」によると、日焼け止めを塗る男性は39.9%。全男性の半分以上が日焼け止めを塗っていない。
77.1%が使うと回答した女性と比べて、男性の塗る割合は著しく小さい。
日焼け止めは老化の大敵「紫外線」を防いでくれる
なぜ日焼け止めを塗る必要があるかというと、将来のシミシワを減らすため。つまり老化を防ぐため。実は、老化の原因の8割は紫外線と言われている(光老化と呼ばれている)。紫外線から自分を守ることは、老化から自分を守ることと同義。いつまでも若々しくいられる。
気持ちだけは若くいたいと豪語する男性も多いが、どうせなら気持ちだけでなく見た目も若くありたいのではないだろうか。そうだよな。そうだよな。
で、老化の原因たる紫外線は、太陽光とともに地球へやってきて、我々の体に降り注ぐ。紫外線には、紫外線A波(UVA)、紫外線B波(UVB)、紫外線C波(UVC)の三種類があって、そのうちUVAとUVBだけが地上へと降り注ぐ。
それぞれをざっくり説明すると、UVAは肌のハリや弾力性を奪う紫外線、UVBは肌を日焼けさせたりシミやソバカスを作る紫外線。どちらも肌の敵。
肌の奥にダメージを与えるUVA
UVAは、地表に届く紫外線の約95%を占める。肌の真皮層まで浸透し、繊維芽細胞を損傷させる。
もう少しかみ砕いて言うと、肌にハリや弾力を生む成分(コラーゲンやヒアルロン酸など)を作り出すのが繊維芽細胞で、繊維芽細胞が損傷すると肌のハリと弾力が失われていく。ハリと弾力を失った肌は、シワができたり、たるんだりする、要するに老ける。
また、メラニン色素の合成も促進され、シミが増える。要するに老ける。
表面を焦がすUVB
UVBは、地表に届く紫外線の約5%を占める。表皮の細胞を損傷させ、炎症を引き起こす。
もう少しかみ砕いて言うと、表皮の細胞を損傷させ、肌を赤くする。海に行った後、肌が一時的に真っ赤になるのはこれが原因。後、UVBの量が強ければ、肌が真っ赤になるだけで済まず、シンプルに火傷する。夏の石垣島で日焼け止めを塗り忘れていた友人は、絶賛火傷で苦しんでいた。南無。
また、赤い肌が消えると、しばらく黒っぽい肌にもなる。で、メラニン色素が沈着し、シミやソバカスが増える。要するに老ける。
日焼け止めの選び方
日焼け止めは、そうした紫外線から自分を守ってくれる神様。使わない理由がない。
で、日焼け止めをどうやって選べばいいかというと、以下の4つの観点から選べばいい。
- 紫外線を防ぐ強さ
- 汗や雨による落ちにくさ
- 肌への優しさ
- 使いやすさ
紫外線を防ぐ強さ
最も大事なものは、紫外線を防ぐ強さ。日焼け止めは、紫外線を防ぐ強さを、以下のように表している。
- SPF
- PA
SPFは、Sun Protection Factor。UVBにより、肌が赤くなったり黒くなったりするのを防ぐ基準。SPFの後に数字が続き、数字が大きいほどUVBを防ぐ効果が高い。日常生活では30以上、アウトドアで遊ぶ日は50以上が目安と言われている。
PAは、Protection grade of UVA。UVAにより、肌のハリや弾力が衰えるのを防ぐ基準。PAの後には「+」記号が並び、「+」記号の数が多いほどUVAを防ぐ効果が高い。日常生活では「+++」以上、アウトドアで遊ぶ日は「++++」以上が目安と言われている。
まとめると、普段使いは「SPF30 PA+++」、アウトドアで遊ぶ日は「SPF50 PA++++」と書かれた日焼け止めを使うのがお勧め。
汗や雨による落ちにくさ
次に大事なのは、汗や雨による落ちにくさ。日焼け止めは肌の上に塗っている性質上、水で落ちる。汗をかけば汗と一緒に流れ落ちるし、雨が当たれば雨と一緒に流れ落ちる。プールや海になんて言った日にはもはや絶望。まあ、ぼくはプールや海に一緒に行く友達がいないから関係ないが。
せっかく日焼け止めを塗ったのに、汗でいつの間にか流れ落ちて日焼け止めの効果を果たさなくなっていたら悲しい。何のために日焼け止めを買ったのか、何のために日焼け止めを塗ったのか、永劫落ち込む。
で、汗や雨、要するに水により落ちにくいのが「ウォータープルーフ」の日焼け止め。これであれば、汗雨プール海も恐れるに足らない。日焼け止めは、「ウォータープルーフ」と書かれている物を選ぶのがお勧め。
肌への優しさ
次は、特に肌が弱い人にとって重要なのだが、肌に優しいか否か。
日焼け止めは、紫外線を吸収するタイプと、紫外線を散乱・反射するタイプがある。
紫外線を吸収するタイプには、紫外線吸収剤が入っており、肌への負担が大きい。その代わり、日焼け止めの透明性が高く、日焼け止めを塗ったことで顔が真っ白になった、なんてことになりにくい。成分に「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」や「パラアミノ安息香酸」があればこっち。
紫外線を散乱・反射するタイプには、紫外線散乱剤が入っており、肌への負担が小さい。その代わり、日焼け止めの透明性が低く、日焼け止めを塗ったことで顔が真っ白になった、ということなりやすい。成分に「酸化チタン」や「酸化亜鉛」があればこっち。
まあ、最近は紫外線吸収剤が入っているけど肌に優しい日焼け止めも増えているらしいので、「子供にも使える」とか、「敏感肌用」とか書かれていたら、比較的肌に優しいと言える。
使いやすさ
最後が、使いやすさ。もっと言えば、日焼け止めを入れる容器の形。チューブ型か、ボトル型か、スプレー型。正直、顔に何かを塗りたくる習慣のない男性は、塗ることさえ面倒だと思う。
なので、自宅で使う場合は、ボトル型がお勧め。玄関近くに置いておけば、出かける直前にワンプッシュで日焼け止めを出すことができ、ぬりぬりしながら外へ出ることができる。ふたを開けたり閉めたりする手間もない。最高。
後はできれば、チューブ型を常に鞄の中に入れておく。で、外出中、気が向いたときに塗り直す。日焼け止めは2~3時間に1回塗り直すのが推奨されているのでお勧め。
もしも、ボトル型もチューブ型も面倒くさいなら、スプレー型。日焼け止めの効果がムラになるリスクはあるか、虫よけスプレーをかける感じでいける。少年時代に虫取りしていた頃を思い出せ。
飲む日焼け止めは金の無駄
ちなみに、最近世間を騒がせている飲む日焼け止めは今のところ金の無駄なのでお勧めしない。塗る日焼け止めと併用して念には念を入れたいだとか、肌が弱くてどうしても塗る日焼け止めが使えないだとかいう理由がなければ、検討する余地がない。
飲む日焼け止めは日焼け止めじゃない
理由の1つが、飲む日焼け止めはそもそも日焼け止めではない。何を言ってるのかわからないと思うけど、ぼくも何を言っているかわからない。
そもそも、日焼け止めという言葉が使えるのは、紫外線吸収剤や紫外線錯乱剤によって、物理的にUVAやUVBを防止する商品に限られる。飲む日焼け止めは、あくまでも抗酸化作用を持つサプリメント。老化・がん・生活習慣病の予防効果はあるが、塗る日焼け止めと同等の効果はない。
実際、「飲む日焼け止め」でググっででてきた商品の公式サイトを見て欲しい。「太陽対策」とか「紫外線対策」とかは書いてあるが、「日焼け止め」とは書いてない。SPFもPAも書いてない。だって書けないから。
日焼け対策の効果に対して価格が高い
もう1つの理由が、日焼け対策としての効果(ここではSPFとPA)が塗る日焼け止めに比べて圧倒的に小さいこと。飲む日焼け止めを飲むと、SPF(肌が赤くなったり黒くなったりを防ぐ効果)が多少上がるらしいが、それでもSPF3にも満たない。
月3000~5000円する飲む日焼け止めでSPF3の効果を得るのがいいか、月1000円未満の塗る日焼け止めでSPF50の効果を得るのがいいか。2秒で答えが出る。
なお、飲む日焼け止めの効果やリスクについては下記で死ぬほど詳しく解説されているためお勧め。
未来に期待しかない
とはいえ、未来の飲む日焼け止めには期待がある。
日焼け止めの面倒なところは、第一に塗ること、第二に塗ること、第三に塗ること。とにかく塗るのが面倒。もしも飲む日焼け止めが進化して、飲むだけで塗る日焼け止めに匹敵する効果を得る日が来たならば、月3,000~5,000円を払ってでも塗る時間を節約する価値はある。
ぼくは人間の進歩を信じる。
でも、繰り返すが飲む日焼け止めは今じゃない。
太陽と共に生きる
ここまでで、紫外線がいかに老化の大敵かわかったと思う。が、太陽は明日からいなくなる、なんてことはない。紫外線を発する太陽と我々は、共存するしかない。太陽があるから地球も存在できるし、人類も存在できる。もはや母。
なので人類は、太陽と共存していくしかない。太陽の光に感謝しつつ、しかし老化の原因になる紫外線は日焼け止めで遠ざけつつ、良い距離感で共存をしていくのがいい。人間関係同様、太陽とも適度な距離感が必要。